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だまし売りNo
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査問会の手口は卑怯である。そこには権力の厭らしさが現れている。このような国家には1mmでも協力したくない。同盟はヤンに協力を求める資格がない。協力することは公平に反する。
田中芳樹『銀河英雄伝説 3 雌伏篇』(創元SF文庫、2007年)ではヤン・ウェンリーが査問会に召喚されてしまう。査問会の手口は卑怯である。そこには権力の厭らしさが現れている。このような国家には1mmでも協力したくない。同盟はヤンに協力を求める資格がない。協力することは公平に反する。

査問会の大きな欺瞞は民主主義を声高に叫ぶ人々によって進められていることである。昭和の日本の左翼も総括や査問会が好きであった。民主主義だけでは多数派の圧制は防げない。

自由惑星同盟を専制国家の対照と見た場合、「自由」を国家名に冠している割に個人の自由を尊重する意識が欠けている。銀河帝国と自由惑星同盟は真逆の国家というよりも、皇帝専制国家と民主主義を標榜する軍国主義国家という専制国家の似た者同士になるのではないか。

専制国家の逆は民主主義国家よりも人権尊重国家になるのではないか。近代憲法で最も重要なものは人権保障である。それは近代憲法が権利章典から出発していることが示している。国民主権(民主主義)は人権保障のための手段であって目的ではない。

自由惑星同盟が査問会ごっこに興じている間にイゼルローン要塞に銀河帝国軍が襲来する。ここで使われた移動要塞は軍事革命を起こしても不思議ではない技術である。20世紀の戦争は移動する大砲(戦車)や飛行場(空母)が大きく変えた。それと同じ変化を起こすのではないか。帝国軍は後の同盟侵攻で兵站面で苦労しているが、移動要塞で侵攻したならば苦労は軽減できただろう。

ラインハルトにとってガイエスブルク要塞は忌まわしい思い出の地である。スペース・デブリになることを望んでいたとも思われる。また、ラインハルトは艦隊指揮官として成功してきた人物であり、移動要塞による軍事革命となると物語の性質が変わってしまう。一方でラインハルトは艦隊指揮官で終わっていない。後にシャーテンブルグ要塞(影の城)やドライ・グロスアドミラルスブルク要塞(三元帥の城)を建造し、要塞を首都防衛の要としている。移動要塞の軍事的価値に気付いても不思議ではない。
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書評掲載URL : http://www.hayariki.net/
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だまし売りNo さん本が好き!1級(書評数:3131 件)

歴史小説、SF、漫画が好き。『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』はマンションだまし売り被害を消費者契約法(不利益事実の不告知)で解決したノンフィクション。

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