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だまし売りNo
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問題は特捜部に限らず、警察の取り調べ全般に共通する。自分達が勝手に作った筋書き通りに供述調書を作ろうとする。
青木理『増補版 国策捜査 暴走する特捜検察と餌食にされた人たち』(角川文庫、2013年)は検察特捜部の捜査を中心に日本の刑事手続きの問題を明らかにした書籍である。警察や検察の不当捜査のターゲットになった人の話を聞くワークショップの内容を書籍化した。

問題は特捜部に限らず、警察の取り調べ全般に共通する。自分達が勝手に作った筋書き通りに供述調書を作ろうとする。これは、その後も変わっていない。村木厚子さんも「結論ありきの取り調べ」と指摘する(「時代の証言者」読売新聞2017年1月27日)。

それ故に調書を作らせない、自白しないことが対抗策になる。警察や検察の筋書きに沿わない話は調書に反映されないのだから、自己弁護も意味がない。以下のように完全黙秘を薦める書籍もある。

「住所・氏名を含めて一切黙秘しましょう(これを完全黙秘と言います)」(全日本港湾労働組合、全国一般労働組合全国協議会、全日本建設運輸連帯労働組合『あたりまえの組合活動があぶない 団体行動権を侵害する仮処分、損害賠償請求、刑事弾圧とたたかう』2012年、58頁)。

制度論としては人質司法が原因である。これがあるために自白の強要が可能になる。原因が明確なのに一向に改善されないところに日本の刑事手続きの救い難さがある。海外からは暗黒の中世並みと評される所以である。

冤罪は捜査すべきでない人を捜査した結果であるが、その背後には捜査すべきものを捜査しなかった面がある。私にも思い当たることがある。本書では佐藤栄佐久元福島県知事が冤罪を主張する。この福島談合事件では早い段階で東急建設の東北支店長が自殺している。私は当時から東急建設らの談合はあったと考えていたが、知事主導とは思っていなかった。本書を読み、知事の関与も疑わしいと感じる。福島談合のキーパーソンの死によって、捜査すべきものが捜査されなかったのではないか。
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書評掲載URL : http://www.hayariki.net/
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だまし売りNo
だまし売りNo さん本が好き!1級(書評数:3131 件)

歴史小説、SF、漫画が好き。『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』はマンションだまし売り被害を消費者契約法(不利益事実の不告知)で解決したノンフィクション。

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