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砂糖が通った「うまい」道~長崎シュガーロードを行く~「食」の巻

「長崎は遠い」=「甘くない」

 「シュガーロード」と聞いても、九州北部の人を除いてあまりなじみのない言葉かもしれない。江戸時代の脇街道「長崎街道」(長崎-小倉、約220キロ)のことで、山陽道や東海道などを通じて江戸につながる。当時唯一の貿易港だった長崎に海外から届いた砂糖が江戸まで運ばれるのに通った道でもあり、10年前、街道が通る長崎、佐賀、福岡の3県と8市が「シュガーロード連絡協議会」を設立し、まちおこしに取り組んでいる。

 そんなシュガーロード沿いの自治体のうち、長崎県の諫早(いさはや)、大村、東彼杵(ひがしそのぎ)の2市1町と、隣接する同県波佐見町(はさみちょう)を回った。第1回は「食」を中心に報告する。(編集局編集委員 石井靖子)

 「長崎の遠か(長崎は遠い)」という表現をご存じだろうか。江戸時代以前から砂糖の入手が比較的容易だった長崎周辺では、カステラをはじめ菓子づくりが盛んになったのに加え、食卓に並ぶ料理も甘みが強い。長崎人はそれを誇りにし、甘みが足りない料理を食べるとこうつぶやく。比喩の「甘くない」の意味でも使われるようだ。東京などで独り暮らしを始めたばかりの学生さんや単身赴任族が、外食した時や都会のとげとげしさに直面した際、思わず漏らす様子が目に浮かぶ。

 そんな長崎人の味覚を幼少の頃から鍛えるのが「チョーコー醤油」(本社長崎市)。1941(昭和16)年、県内29の醸造元が、全国初の共同施設による生産、販売を行うために発足させた「長崎醤油味噌醸造工業組合」が前身だ。

 同社大村工場を訪ね、しょうゆができるまでの説明を受けた。製造過程がデリケートで、企業秘密も多いとのことで、工場内の撮影は一部しか認められなかったが、古い貯蔵タンクなどに歴史と伝統を感じるとともに、最新の技術による品質管理が行われていることが理解できた。

 見学の後はいよいよ味見。しょうゆだけで10種類以上が製造され、そのうち3種類を試させてもらった。まずは「さしみしょうゆ」(本醸造特級しょうゆ)から。

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