現地時間で2017年12月22日(金)の夜にカリフォルニア州のバンデンバーグ空軍基地から打ち上げられたSpaceXのFalcon 9ロケットは、まるでUFOか某国のミサイル発射実験を思わせる奇妙な模様を夜空に描いたことで話題になりました。その一部始終を撮影したムービーには世にも珍しい現象の模様が収められているほか、自ら地上に帰還できるFalcon 9ロケットならではの光景もクッキリと収められているものもあり、ロケット好き必見の内容となっています。

Here's a Time-Lapse of SpaceX's 'UFO' Rocket Launch

https://petapixel.com/2017/12/26/heres-time-lapse-spacexs-ufo-rocket-launch/

Why did last week's SpaceX launch look so strange? | Popular Science

https://www.popsci.com/spacex-launch-look-strange-alien

SpaceXが打ち上げたFalcon 9ロケットはイリジウム・コミュニケーションズの通信衛星10基を搭載して打ち上げられ、まもなく夜になろうとしていたカリフォルニアの空にひときわまぶしく輝く模様を描き出しました。その様子はイーロン・マスクCEOも把握しており、自身のTwitterアカウントで「北朝鮮からの核宇宙人UFO」とジョークを飛ばしています。





今回の打ち上げで話題になったのが、ロケットが作りだした軌跡の描いた模様でした。その様子を微速度撮影した以下のタイムラプスムービーでは、その模様が変化する様子が美麗に捉えられています。

SpaceX Falcon 9 Rocket Launch Timelapse - YouTube

夕方から夜になろうとするカリフォルニアの空に、白く光るFalcon 9ロケットの軌跡。このムービーを撮影したのは、アリゾナ州在住のカメラマン、ジェシ・ワトソンさんで、4台のカメラと5本のレンズを駆使して一部始終を捉えています。



ムービーでは、大きく広がる白煙のようなものを残しながら地平線のかなたへと飛んで行くFalcon 9ロケットの様子を見ることができます。



ワトソンさんは、めったにない珍しい機会を収めることに成功。空に漂う白い模様が時間と共にゆっくりと変化するというスケール感あふれる様子が捉えられています。



ちなみにワトソンさんが使ったカメラの種類は「Nikon D810(×2台)」「Sony a6500」「Sony a7S II」で、使用したレンズは「Nikon 14-24mm f/2.8」「Nikon 24-70mm f/2.8」「Nikon 85mm f/1.8」「Nikon 25mm f/2.2」「Tamron 150-600mm f/5-6.3」だそうです。



軌跡が夜空にくっきりと浮かび上がった原因は、当時の気象状況と時間帯が大きく関わっているとのこと。ロケットが飛んで行く空域は当時、非常に冷たくて乾燥した空気の層となっており、そこにファルコン9のロケットエンジンから排出されたガスに含まれる「水」が放出されることで小さな氷の粒が生じます。また、地表近くではもう夜になろうとしていた一方で、ロケットが飛んでいた高度ではまだ太陽が沈まずに日光が届いていた状態。これらの条件が重なることで、夜になろうとしているカリフォルニアの空で、ロケットから吐き出された水か氷の粒となって太陽光を受け、明るく輝いて人々を驚かせたというわけです。ロケットの軌跡というと、飛行機雲と同じように一直線というイメージがありますが、今回の軌跡が奇妙な模様を描いたのは、高度が高くて気圧が低いため、ロケットのノズルから噴射されたガスが大きく広がったことが理由の1つとして考えられています。

もう1つは、珍しい気象条件のおかげで一般の人が撮影に成功したムービーで見ることができる、Falcon 9ロケットならではの理由です。

SpaceX Iridium NEXT 4 Launch Telephoto From Manhattan Beach CA - YouTube

打ち上げられたFalcon 9ロケット。明るい光を放ちながら上昇を続けます。



打ち上げから約2分30秒後、時速約7500kmにまで加速したFalcon 9ロケットは第1段ブースターを切り離し、ついで第2段ロケットに点火して宇宙空間を目指します。



すると、第2段ロケットから吹き出されるガスの形状に大きな乱れが。



なんとこれは、役目を終えた第1段ロケットが方向転換するためにガスを噴射したためでした。つまり、第1段ロケットを再利用するFalcon 9だからこその「乱れ」だったというわけです。ムービーには、宇宙を目指して上昇を続ける第2段ロケット(下図左)と、着地点を目指して方向転換する第1段ロケット(右)の様子が克明に収められています。



なお、今回の打ち上げでは第1段ロケットは回収されず、予定された場所に落下した模様。ムービーには、姿勢制御用のスラスターからガスを吹きつつ、落下地点を目指す第1段ロケットの様子が収められています。