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だまし売りNo
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江戸時代に残ったのは仙石家だった。歴史の不合理を感じる。どんな悲惨な状況に陥っても前向きに頑張る姿勢が明暗を分けたならば、頑張ることを強要する特殊日本的ガンバリズムの世界になってしまう。
宮下英樹『センゴク一統記(12)』 (ヤングマガジンコミックス) は引田の戦いの敗戦処理と賤ヶ岳の戦いを並行して描く。長宗我部元親は仙石権兵衛秀久を叩きのめした。しかし、その仙石のせいで島津攻めでは痛恨の被害を出してしまう。しかも、江戸時代に残ったのは仙石家だった。歴史の不合理を感じる。

どんな悲惨な状況に陥っても前向きに頑張る姿勢が明暗を分けたならば、頑張ることを強要する特殊日本的ガンバリズムの世界になってしまう。最早、焼け野原から経済大国にしたような前に進むことしかできない姿勢を自慢する時代ではない。

仙石は若者の猪突に流されて敗北した。これは羽柴秀吉を天下人に押し上げた賤ヶ岳の戦いの戦いと重ね合わせると意味深長である。佐久間盛政は若さ故の猪突で緒戦に勝利したが、敗退する。柴田勝家も「鬼柴田」「かかれ柴田」の異名に相応しく勇猛果敢に砦を攻めるが、老いには勝てなかった。昔ながらの感覚のまま変わらない武将は滅ぶ。

これに対して秀吉は統治者・政治家の視点で戦を進める。それを見据えた前田利家は兵を退く。「槍の又佐」の異名を持ち、槍働きで武功を立てたイメージのある利家であるが、ここでは武勇で勝負せず、政治家になっている。秀吉は利家のような人格者が政権に必要と口説くが、これは正しかった。秀吉没後も利家が生きているうちは豊臣政権は続いていた。

最初は槍働きで出世した武将も、ある程度大きくなると政治家に転身する。それができた人物が歴史に名が残る。これは、よくある視点である。この視点に立つと、仙石は佐久間や柴田と同類に見える。それでも生き残り続けた点では佐久間や柴田と異なる。この相違が何なのか興味深い。
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書評掲載URL : http://www.hayariki.net/
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だまし売りNo
だまし売りNo さん本が好き!1級(書評数:3131 件)

歴史小説、SF、漫画が好き。『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』はマンションだまし売り被害を消費者契約法(不利益事実の不告知)で解決したノンフィクション。

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